2012年06月08日

556)現代病というストレスから子どもを救う児童文学

6月20日(紙版)に『ブックバード日本版』No.9が発売されます。
この雑誌の制作販売を始めてから、3年が経とうとしますが、その中で多分一番重たい内容の論文が勢ぞろいでした。

全体のテーマは、世界の児童文学が語る「トラウマ」です。
いろんなカタチのトラウマがあると思いますが、今世界的に子どものウツというか、精神的な問題が増えつつあるのだなと感じます。

それは、戦争や内紛といった不幸な環境からだけではなく、ストレスなどの現代病が子どもの問題にもなって心をむしばんできたというアラームです。

いじめや虐待は、今の日本でも多くなったと言われますが、それは日本だけの問題ではないことが伺えます。

世界レベルで、これからの子どもが成長する環境をどう作っていくかを本気で大人が考えなければ、「壊れた子どもたち」(失礼な言い方ですが)が、壊れた社会でリカバーできずに成長し、生きていけなくなってしまいます。

そんなことを考えながら、これからの子どもの本の役割は、平和のベールの下に隠れている不幸な子どもたちの心のケアなのではないかと思いました。

そして、今号には韓国と日本の関係において温度差を感じる号でもありました。韓国では、ここ数年で日本の従軍慰安婦についての絵本の出版が続いているという論文です。

正直言って、あまりにも生々しすぎ翻訳では苦労しました。でも、子どもを対象にした従軍慰安婦の絵本が続けて出版されているというのは事実ですし、韓流ブームの裏側で若い研究者がこのことに注目し、強い意見を述べているということを知ってもらいたいです。

また、これは日本の戦争責任の問題を問うのではなく、性的な虐待を受けた子どもへの影響という視点から、オリジナルの英文ブックバードに掲載され、世界中で読まれている論文です。触れられたくない部分だからと日本人だけが無視することはできません。
これらの絵本に対し日本の研究者からの意見論文なども出てくれば、子どもの本で国際理解という、『ブックバード』を発行しているIBBYの理想に近づけるのではないかと思います。

このように特集全体はとても暗いです。ですが、子どもの本はそれでも希望を見出そうとします。その秘めたエネルギーを感じ、興味深く読めます。

http://www.fujisan.co.jp/product/1281684003/

前号の「ショーン・タン」とは、全然違う方向性で、これが世界の児童文学誌の面白いところ!みなさま、どうかよろしくお願いいたします。

  

Posted by 株式会社マイティブック    松井紀美子 at 16:34Comments(0)