2014年03月06日

571)本が売れないのは図書館のせいか?

本の学校 特別シンポジウム2014春

街の本屋と図書館の連携を考える
―地域社会での豊かな読書環境構築に向けて―

に参加して感じたこと・・・・ 

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 本が売れない。これは事実です。
また、起業して10年が経ちますが、本の売れ方が変わったということも身を持って感じます。

 まず、書店経由での注文がほとんどなくなりました。もともと書店と出版社をつなぐ取次ぎという本の卸やさんへの高いマージンを払えず、直販を主体にしていたため、書店販売は強くないのですが、それでも当初は書店の注文が売上の半分くらいありました。自社サイトやアマゾンなどのネット書店でも売っていたのですが、10年前は読者が「本が欲しい」と思った時に、まず行くところが書店だったのだと思います。

 書店にしてみれば、出版社1社との直接取引は在庫管理上かなりの手間になります。「マイティブックに電話をして注文する」。この行動を起こす倍以上の書店は、「マイティブックの本が欲しい」とやって来たお客様に「お取扱いできません」と伝えていたのではないでしょうか?そう考えながら毎日、書店の存在は読者にとって、とても大きいのだあと電話を受けていました。

 それが、10年たった今はどうかというと、書店からの注文はほとんどありません。マイティブックの本の売上げはさほど変わっていないのですが、ほとんどがネット経由で売れます。私自身もそうですが、本当に欲しい本は、まずネットで探します。読者の購買意欲は変わっていないが、動向が変わった、そう感じています。

 街の書店で本が売れない、書店が潰れている、とよく言われますが「書店で本が売れない」だけで、本は売れている。そういう現実があるのだと思います。

 それでは、この出版不況、出版社のデータでも本が売れていないという事実はどうなのかですが、これは、「つまらない本」が売れない、出版点数は増えるけれど、読者が買って読みたい本が少ないということで、書店の問題とは少し状況が違うような気がします。

 出版社はメーカーです。メーカーは家電にしろ食品にしろ、消費者のニーズに合っていない商品は作っても売れない。これは当たり前です。出版社は出版社で、もっと読者のニーズを追及していかなければなりません。「つまらない本」が多いよね、と自分も含め出版社の人間同士がグチグチ話し合うのは情けない限りです。

 子どもの本の世界では、マンガやキャラクターを使った売れる本が、とても商業的で悪い本のように言われる傾向があります。でも、これは子どもが喜ぶという購買者のニーズを抑えた本でメーカーとしては、当たり前の商品を供給しているのです。

 ただ、売れる本のもうひとつの方向に、本当に子どもの未来を考えた良い本のカテゴリーがあることも、出版社は知っています。まともな出版社であれば、そんなロングセラーになるような良い子どもの本を作るために、すなわちメーカーとして商品開発をする努力を重ねているはずです。

 そして、良い商品を作ったら、エンドマーケットに届けることがとても重要です。出版社にとってのエンドはどの辺かというと、マイティブックの場合は書店です。ただ、現状を正確に言うとすれば、書店「でした」となるかもしれません。

 街の書店で本が売れないのは、図書館のせいだという話もよく聞きます。先日セミナーで、「図書館は敵なのか?見方なのか?」というテーマの議論を、とても興味深く聴講させてもらいました。そして、最終的な議論の焦点が「図書館と書店は連携して、読書環境を向上させ、本が売れる環境を作ろう」とまとめられ、正直「何のこっちゃ」といった感想でした。今の書店という小売形態へ、本当に大変な危機感を感じてしまいました。

 確かに、街の中に何万冊も本が詰まった素晴らしい(しかも最近はおしゃれです)図書館が出来ると、本を買うニーズは減ってしまうという関係性はあります。しかし、「図書館と書店の機能は基本的に違うのだから、連携して読書環境を向上させましょう」とまとめるのは、小売業としての書店の本質をごまかしているようにしか思えませんでした。

 多分、ほとんどの書店経営者は確信的にこの言葉を「減った顧客を取り戻す」という意味、すなわち「図書館に新しいお客様になっていただき、売上を上げる」と言いたいのでしょう。そこらあたりの税金の使い道のような話などもありましたが、全くナンセンスです。
 
 「これでよいのか?」 

 先ほども書きましたが、マイティブックが本を読者に届けるための流通エンドは書店です。これからも書店だと言いたい。なぜなら、取り引きは多くはないけれど、努力し売ってくれる、感謝の気持ちでいっぱいの書店が日本全国にいくつかあり、そんな書店の必要性を感じるからです。でも、いくつかで本当によいのか? マイティブックのためだけでなく、出版の未来のためにも

 「だめでしょ?」

 書店は小売業という観点から言うと、定価販売なので競争原理の働かない非常に特殊な販売業です。また、取次ぎという特殊な機能もあるので、業界外の人にはなかなか切り込みずらいMDです。

 しかし、そんな小難しい話ではなく、日頃の消費者の目で街の書店を見ると、課題や問題点が見えてきます。どの店も同じ値段で、同じ商品を取り扱う小売業には競争原理が働きません。イメージですが、社会主義国の売り方はこうなんだろうな、お客様に「いらっしゃいませ」と言わないのは。

 小売業の常識からいえば、お客様の来店は飛び上がって喜ぶべきことで、それは「いらっしゃいませ」精神です。なぜ書店の場合、店員もしくは店長は、お店にお客様が入っても無視、もしくは「オレに話しかけるな~」、「めんどくさいこと聞くな~」で、全身から忙しいモードを発していることが多いのでしょうか。(もちろん、店ではなく人のことではあるのですが、全体の空気として・・・)

 お客様にとっても書店は特殊なお店です。タダで何時間もいていいし、空調も効いているし、と暇つぶしのフリースペースとして利用できるのです。タダで居心地のよいスペースを提供するだけというのは、普通の小売店舗の商いとしては成り立ちません。ハタキを持って追い出す、昔のマンガのようなスタイルのほうが経営としてまともだと思います。

 ただ、それでもこれだけ多くの書店が日本に存在するのは、取次ぎのフランチャイズ構造で、在庫のリスクがなかったからでしょう。これは非常に大きなメリットです。しかし、さらに読者にもっと親切な機能を兼ね備えたネット店舗という競合が出現し、街の書店はネット書店のショールーム化してしまいました。高額で重たい本ほど、ポイントが溜まったり、配送してくれたりするネット注文のほうがいい、書店では買わないでしょう。メリットがあっても売れなければ商売になりません。他の業界の店舗での小売りでもネットに対しては同じ状況ですが、価格で勝負できない書店はもっと厳しいです。

 一方で、そうは言ってもお客様が来なければ本は売れません。その通りです。でも、やって来るお客様が、買うという動線でつながっているのか?という部分を見ると、ほとんどがレジにしかフックがありません。ポップや棚の工夫も良いのですが、その店で買う、もしくは買わせるという行為の啓蒙に、書店はもっと気を配るべきです。「おもてなし」とまではいかなくても、「いらっしゃいませ」の態度が売上げに非常に関係しているという、これも普通の小売店では割と当たり前の感覚を取り入れるだけでずいぶん違うと思います。

 感じの悪い店員、店長がいる店は、飲食店なら一発アウトです。ショップでは買わないという選択ができますが、飲食はいったん入るとお金を払わなければいけません、ですから一期一会の接客の基本が勝負です。普通の販売で書店に近いところでいうとユニクロでしょうか? 態度にお金という経費はかかりませんし、事業規模も関係ありません。

 もう少し何とかなるのではないか? せめて、お客様に笑顔で、せめてお客様が不快にならない程度に、問い合わせに回答して欲しいと思ったりします。書店は小売業。書店のお客様は図書館ではなく、1冊、1冊を買ってくれる読者だと思います。その積み重ねが売り上げに、利益になってこそ、街の書店が生き残る道となるのです。

 図書館が購入書籍に万引き防止のタグを付ける作業がめんどくさいから、それを書店がやってあげる、そこまでできる書店が取引先として採用される…。これもセミナーのご意見で伺ったことですが、これは書店という小売り業のサービスではありません。立派な人件費を使った別料金のお仕事です。これが、図書館と書店の連携というのでしょうか? 図書館のイベントに本を売りに行くというのは理解できますが…。

 とまた、余計なことを言ってしまいました。
 
 でも、書店が対読者の窓口として機能しなくなると、一番困るのは、出版社なのです。零細出版社の立場から言えば、読者から直接ご注文いただき、出版社から配送するのが、一番利益が出ます。ここで、読者からよく誤解をされるのですが、ネット注文の場合、アマゾンは違います。アマゾンのようなネット書店は、出版社から見れば街の書店と同じで、手数料をお支払しなければなりません。

 しかしながら、読者がピンポイントでマイティブックの本を見つけアクセスし、自社サイトもしくは電話で購入してくれるという幻想を現実のものにするためには、私の年収の1000倍くらいのお金が必要なことも分かっているため、現実的にはネット書店に頼っています。

 だったら…、駅前にある書店、商店街の中にある書店、ショッピングモールにある書店に売ってもらうほうが絶対いい。
 なぜなら、街の書店はエンドユーザーの顔を見ているからです。本を買う人たちがどんな人たちなのか、その現場を出版社の目となって見てくれると期待しているからです。本当であれば、自分で売りたい。どんな人が、いつ、どうやって買っているかというマーケットデータが、売れる本の週間タイトルだけでなく、もっと欲しい。それくらい喉から手が出る情報が書店から欲しいです。

 単純なマーケットデータは、ネット書店のほうから、集計しやすいという事もあり入手できます。ただ、子どもの本を作っている側から見ると、自動販売機を相手に本を卸しているような感覚です。商業的には売れる本の傾向として参考にはなりますが、もっとリアルなところの読者動向を知って、本当に次世代に必要とされる良い本を作るためには、努力する良い書店とお付き合いする方が間違いないでしょう。

 街の書店さんには、お客様一人一人。地域の商圏をガッツリ抑えて頑張って欲しい。アルバイトが新刊並べて、後はご自由に、ではない書店に1つでも多く出合いたいものです。このままでは、図書館どころがコンビニに空間としての機能まで奪われてしまいます。そんな寂しいことにならないように、頑張って欲しいです。

 ご協力も惜しみません。書店復活のアイデアは、だてに世界の図書館や書店を見ているわけではないので、いっぱいあります。お気軽にご相談ください。

<次回に続く>



Posted by 株式会社マイティブック    松井紀美子 at 16:41│Comments(1)
この記事へのコメント
衝動的にダラダラと書いてしまいました。読みずらく申し訳ございません。
また、たくさんの方からいろいろと私の感想に感想をいただきました。
ありがとうございます。

それだけ、書店さんや図書館に興味を持つ方が多いのですね。改めて、思います。

紙の本を、読者に対面で販売できるのは書店だけです。
子どもに手渡す絵本は紙の本しかないと思う私は、書店の存在が大きいと思っています。

BOOK+READ=LOVEを、今年のマイティブックのメッセージにしていますが、BOOKSHOP+READ=Lot of LOVE
も加えたいと思います。 
Posted by 株式会社マイティブック    松井紀美子株式会社マイティブック    松井紀美子 at 2014年03月07日 09:00
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